人工血管の障害年金は何級?認定条件を社労士が解説
「人工血管を入れたら障害年金は何級になるの?」
「手術が終わって仕事に戻っていても申請できる?」
「国民年金だった場合も3級を受給できる?」
人工血管の手術を受けた方にとって、障害年金の等級は分かりにくい問題です。結論からいうと、人工血管を挿入した方が一律に3級となるわけではありません。原因となった大動脈疾患、人工血管の部位、術後の一般状態、初診日に加入していた年金制度などを確認する必要があります。
この記事では、人工血管挿入後の障害年金について、3級の具体的な認定基準と、1級・2級の可能性、申請時の注意点を社会保険労務士が解説します。
✅ この記事で分かること
- 人工血管挿入で障害厚生年金3級が検討される条件
- 人工血管を入れた事実だけで3級とは限らない理由
- 障害基礎年金には3級がないこと
- 合併症や手術後遺症によって上位等級となる可能性
- 診断書や申立書で伝えるべき内容
💡 この記事の結論
胸部大動脈解離または胸部大動脈瘤により人工血管を挿入し、一般状態区分が「イ」または「ウ」に該当する場合は、障害厚生年金3級が検討されます。人工血管にはステントグラフトも含まれ、胸部大動脈瘤には胸腹部大動脈瘤も含まれます。
ただし、人工血管を使用したすべての手術が自動的に3級となるわけではありません。初診日に国民年金へ加入していた方には3級がないため、2級以上の状態に該当するかを確認します。関連する合併症や手術後遺症が重い場合は、2級以上に認定される可能性があります。
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人工血管挿入で障害厚生年金3級が認定される条件
日本年金機構の障害認定基準では、大動脈疾患による3級の状態として、次の条件が示されています。
| 確認項目 | 3級の基準 |
|---|---|
| 原因疾患 | 胸部大動脈解離(Stanford分類A型・B型)または胸部大動脈瘤 |
| 手術 | 人工血管を挿入していること。ステントグラフトを含む |
| 一般状態 | 一般状態区分表の「イ」または「ウ」に該当すること |
| 年金制度 | 原則として初診日に厚生年金へ加入していること |
| その他 | 初診日要件と保険料納付要件を満たすこと |
胸部大動脈瘤には、胸部から腹部にまたがる「胸腹部大動脈瘤」も含まれます。一方、腹部大動脈瘤や末梢動脈の手術などは、人工血管を使用したという事実だけで、この3級基準に当てはまるとは限りません。傷病名や障害の状態に応じて個別に判断されます。
認定基準の原文は、日本年金機構の「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」で確認できます。
一般状態区分「イ」と「ウ」とは
| 区分 | 一般状態の目安 |
|---|---|
| イ | 軽い症状があり、肉体労働は制限されるものの、歩行や軽労働、座業はできる状態 |
| ウ | 歩行や身の回りのことはできるものの、ときに介助が必要で、軽労働はできず、日中の半分以上は起きている状態 |
手術名だけでなく、術後にどの程度の活動制限があるかが重要です。胸痛、息切れ、強い疲労感、血圧管理の状況、家事や外出、仕事上の制限などを具体的に整理します。
人工血管挿入で1級・2級に認定される可能性
大動脈疾患は、一般的には1級・2級に該当しにくいとされています。ただし、障害認定基準では、大動脈疾患に関連する合併症や周辺臓器への圧迫症状、手術後遺症の程度によっては、上位等級に認定することが示されています。
- 合併症や後遺症により、日常生活が著しく制限されている
- 家の中での軽い活動を超える行動が難しい
- 身の回りのことにも継続的な介助が必要である
- 複数の心血管疾患があり、全身状態が重い
1級・2級は「人工血管を挿入したから」ではなく、合併症や後遺症を含む障害の重さを総合的に見て判断されます。
障害基礎年金には3級がありません
初診日に自営業、学生、無職などで国民年金に加入していた方は、原則として障害基礎年金の対象です。障害基礎年金には1級と2級しかありません。そのため、3級相当の状態だけでは障害基礎年金を受給できません。
ただし、合併症や手術後遺症により日常生活が著しく制限され、2級以上の状態に該当すれば、障害基礎年金が認定される可能性があります。
人工血管の部位・状態別にみる等級判断のポイント
| 状況 | 等級判断の考え方 |
|---|---|
| 胸部大動脈解離・胸部大動脈瘤で人工血管を挿入し、一般状態がイまたはウ | 初診日に厚生年金加入なら3級を検討 |
| ステントグラフト内挿術を受けた | 認定基準上、人工血管に含まれる。ただし原因疾患と一般状態も確認 |
| 腹部大動脈瘤のみ、または末梢血管に人工血管を使用 | 人工血管だけで上記3級基準に該当すると断定できない。症状や機能障害を個別評価 |
| 重い合併症・手術後遺症がある | 障害の程度により2級以上となる可能性 |
| 初診日に国民年金へ加入 | 3級はないため、2級以上に該当するかを確認 |
福岡市や北九州市で手術を受けた方でも、病院の所在地で等級が決まるわけではありません。原因疾患の初診日、加入制度、人工血管の部位、術後の生活・就労制限を資料で示すことが大切です。
人工血管の障害年金申請で注意すべき4つのポイント
1.手術日ではなく原因疾患の初診日を確認する
初診日は、原則として人工血管の手術日ではありません。大動脈解離や大動脈瘤など、手術の原因となった傷病について初めて医師の診療を受けた日です。救急搬送前に関連症状で受診していた場合などは、受診歴を丁寧に確認します。
2.障害認定日を手術日と決めつけない
ペースメーカーや人工弁には、装着日を障害認定日とする取扱いがあります。一方、人工血管については、手術日が当然に障害認定日になるとは限りません。原則である初診日から1年6か月後との関係を含め、請求時期を個別に確認しましょう。
3.診断書に一般状態と術後の支障を反映する
診断書では、傷病名、手術日、人工血管の部位、ステントグラフトの有無だけでなく、臨床症状、検査所見、治療経過、一般状態を確認します。医師に作成を依頼する前に、家事、歩行、外出、通院、仕事で困っていることを整理しておくと伝えやすくなります。
4.働いている場合は職場の配慮まで説明する
就労していることだけで不支給になるわけではありません。重量物を扱えない、長時間勤務が難しい、休憩や通院の配慮がある、配置転換を受けたといった実情を、病歴・就労状況等申立書に具体的に記載します。
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人工血管と障害年金に関するよくあるご質問
Q1. 人工血管を入れたら必ず障害年金3級になりますか?
いいえ、人工血管を入れた事実だけで必ず3級になるわけではありません。胸部大動脈解離または胸部大動脈瘤、人工血管の挿入、一般状態区分イまたはウなどの条件を確認します。初診日の年金加入制度や保険料納付要件も必要です。
Q2. ステントグラフトも人工血管に含まれますか?
はい、障害認定基準では人工血管にステントグラフトも含まれます。ただし、ステントグラフトを入れたことだけで等級が決まるのではなく、原因疾患と一般状態なども併せて審査されます。
Q3. 腹部大動脈瘤の人工血管置換でも3級になりますか?
人工血管置換だけで3級になるとは断定できません。明示された3級基準は、胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤が対象で、胸腹部大動脈瘤は含まれます。腹部のみの場合は、残っている症状や機能障害を含めて個別に確認します。
Q4. 人工血管を入れた日から障害年金を請求できますか?
手術日から請求できるとは限りません。人工血管については、手術日を当然に障害認定日とする取扱いが明示されていないため、原則の障害認定日や現在の状態を確認します。ペースメーカーや人工弁と混同しないことが大切です。
Q5. 働きながらでも障害厚生年金3級を受給できますか?
働いていても受給できる可能性はあります。仕事内容、勤務時間、欠勤、配置転換、職場の配慮などを含め、どのような労働制限があるかが確認されます。診断書と申立書の内容を整合させることが重要です。
Q6. 国民年金加入中に初診日がある場合、3級は受給できますか?
障害基礎年金に3級はありません。人工血管の状態が3級相当だけであれば、原則として障害基礎年金の対象外です。ただし、合併症や手術後遺症を含めて2級以上に該当する場合は、受給できる可能性があります。
Q7. 申請にはどのような資料が必要ですか?
年金請求書、診断書、初診日を証明する書類、病歴・就労状況等申立書などが基本です。手術記録や退院時の資料、画像検査の結果などが参考になる場合もあります。必要書類は個別の経過によって異なるため、提出先や専門家へ確認しましょう。
まとめ|人工血管の部位・一般状態・初診日の加入制度を確認しましょう
人工血管挿入による障害年金は、「人工血管があるか」だけでは判断できません。胸部大動脈解離・胸部大動脈瘤に該当するか、一般状態がイまたはウか、初診日に厚生年金へ加入していたかを順番に確認することが重要です。
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最終更新日 1週間 ago
投稿者プロフィール

- 特定社会保険労務士_全国社会保険労務士連合会 第40190102号
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障害年金は、身体障害をはじめ、知的障害、うつ病・統合失調症などの精神疾患、ガン・脳血管疾患・心疾患・糖尿病など、ケガや病気により生活や仕事に不自由のある方を対象とした制度です。
しかしながら、本来であれば受け取る権利があるにもかかわらず、認知度の低さや受給手続きの複雑さから途中で手続きをあきらめてしまったりなど、「障害年金制度」の役割を果たせておらず、多くの方々が受給に至っていないのが現状です。
そこで『障害年金のことで困っている方々の力になりたい』という想いから、障害年金特化型の当事務所を立ち上げました。
障害年金を受給できれば、ご自身やご家族の経済的な安定はもちろん、精神的な支えにも繋がるはずです。
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